2024年12月22日にベトナム南部ホーチミン市で開業した都市鉄道1号線(ベンタイン~スオイティエン)。運行開始から約1年あまりが経ち、累計利用者数はすでに 2,200万人を突破しました。開業当初は、観光ついでの体験乗車が中心でしたが、今ではすっかり市民の足として定着し“通勤・通学を支える日常の交通手段”へとシフトしています。

都市鉄道1号線は、市中心部のベンタイン駅から北東部のスオイティエンターミナル駅までを結ぶ全長19.7kmの路線で、地下3駅・高架11駅の計14駅で構成されています。建設には独立行政法人国際協力機構(JICA)の円借款(低い金利・長い返済期間で資金を貸し付ける支援制度)が活用されるなど、日本がプロジェクトを大きく支えました。

車両は日本の日立製作所による3両編成で、最大930人が乗車可能。最高速度は高架区間で時速110km、地下区間で時速80kmとなっており、終点までの所要時間はおよそ30分。慢性的な渋滞に悩まされてきたホーチミン市にとって、まさに“都市の移動を変える存在”となっています。

この都市鉄道1号線は、日本の技術力が海外の都市インフラ発展にどのように貢献しているのかを現地で実感できる好例です。ベトナムに興味のある方や、海外インフラに関心を持つビジネスパーソンにとって、ぜひ注目しておきたいトピックと言えるでしょう。

開業から最初の6カ月間、都市鉄道1号線は午前5時から午後10時まで、1日あたり200本の列車が運行される予定です。通常時は12分間隔、通勤ラッシュなどのピーク時には8分間隔での運行となり、利用者にとって使いやすいダイヤが組まれています。

運賃は距離に応じて変動し、現金支払いの場合は片道7,000~20,000ドン(約43~124円)キャッシュレス支払いの場合は片道6,000~19,000ドン と、キャッシュレスのほうがやや割安です。

さらに、利用スタイルに応じて選べる乗車券も用意されています。

  • 1日乗車券:40,000ドン(約240円)
  • 3日間乗車券:90,000ドン(約540円)
  • 1カ月定期券:300,000ドン (約1,800円)
     ※学生は半額で利用可能
     ※高齢者・障がい者・6歳未満の子どもは無料

誰でも使いやすい料金体系となっており、観光客からビジネスパーソンまで幅広い層に利用されています。

路線図。現在は1号線のみ開通

ホーチミン市で都市鉄道の整備が進められてきた背景には、急激な人口増加という喫緊の課題があります。ベトナム最大の都市であるホーチミン市には、2026年3月時点で約1,400万人が居住しており、2016年からの10年間でおよそ600万人もの人口が増加しました。都市の拡大スピードは東南アジアの中でも突出しており、既存の交通インフラでは支えきれない状況に直面していました。

現在、ホーチミン市民の主な移動手段はバイクで、街中には二輪車があふれています。しかし、今後の経済成長に伴い自動車の利用が確実に増加していくと見られており、道路交通はさらに逼迫することが予想されます。道路整備やバス路線網だけでは、急増する交通需要に対応するのはもはや限界を迎えているのです。

こうした状況を打開するために進められたのが、今回の都市鉄道整備事業です。都市鉄道の導入によって、

  • 慢性的な交通渋滞の緩和
  • 大気汚染の軽減
  • 都市の分散化と新たな経済圏の形成
  • 持続可能な都市成長への転換

といった効果が期待されています。 都市鉄道1号線はその第一歩であり、ホーチミンという“巨大都市”がこれからどのように変わっていくのかを象徴する重要なプロジェクトと言えます。