テト(旧正月)は、ベトナム人にとって一年で最も重要な祝日です。家族が集まり、故郷に帰り、新しい年を祝うこの特別な時期には、欠かせないものがいくつかあります。その一つが、伝統的なテト料理です。
テトの料理は、地域によって少し異なりますが、家族の絆や団結を象徴し豊作を祈る気持ちが込められているということでは全ての地域で同じです。
ここからは、代表的なテト料理をご紹介します。

バインチュン(Bánh chưng): 北部で特に人気のある四角い餅のような食べ物です。もち米、豚肉、緑豆をバナナの葉で包んで蒸します。作るのに手間がかかるため、家族みんなで協力して作ることも多く、テトの思い出深い一品となっています。

バインテット(Bánh tét): 南部でよく見られる円筒形の餅です。バインチュンと似た材料で作られますが、形が異なるため、見た目も味も少し違います。

ゾゥルア(Giò lụa): 日本風のソーセージのようなもので、豚肉や牛肉をミンチにして香辛料と混ぜ、腸詰めにして蒸したものです。

ネムラン(Nem rán): 揚げ春巻きです。豚肉、エビ、野菜などを春巻きの皮で包んで揚げます。
テト料理には、それぞれ深い意味が込められています。例えば、バインチュンは天と地、陰と陽、そして家族の団結を象徴しています。また、緑豆は豊穣を、豚肉は富を象徴すると言われています。これらの料理を食べることで、人々は新しい年が豊かで幸せであることを願います。
現代では、冷蔵庫やスーパーマーケットが普及したため、昔のように手間をかけて料理を作る家庭は少なくなってきました。しかし、テトの伝統料理を作ることは、家族の絆を深め、伝統文化を継承する上で重要な意味を持っています。
多くの家庭では、忙しい合間を縫って、昔ながらのレシピで伝統料理を作り、家族みんなで食卓を囲みます。また、近年では、若い世代が伝統料理をアレンジした新しいメニューを考案するなど、伝統と現代が融合した料理も登場しています。
テトの料理は、単なる食べ物ではなく、ベトナム人の文化や歴史を物語る大切なものです。